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改憲の鍵を握る憲法第96条改正について~そのメリットとデメリット~

 2017/03/01 社会・政治 この記事は約 7 分で読めます。 48 Views
改憲

いま、憲法改正が話題になっています。戦後70年が過ぎてもなお、憲法がそのままの形で存置されているという日本の事例は、国際的にも極めて珍しい、ということは良く言われることです。とりわけ第二次安倍政権発足してすぐ争点となったのは96条の改正問題ですね。

この96条というのは、憲法改正の手続き自体について憲法内で定める条文ですけれども、改正手続きのハードルをより低くし、憲法の修正可能性をより高めようという意図があります。

憲法というのは、そもそも私たちが定める私たち自身についてのルール、すなわち「法律」の内容に関して、その内容の自由度を設定する「法律についての法律」と言うべきものです。

近代国家というのは、特定個人や特定集団の恣意的な意思によってではなく、集合的な意思を集約させるある形式的な手続きによって定められた意思決定(=法律)が、その社会を規制する唯一の特権的ポジションを占める、という「法治国家」という枠組みを採用しています。

しかし、法治国家というのは、そのことがそのまま民主的国家と同義とはなりませんし、自由主義的国家と同義にもなりません。

これはよく言われることですが、ナチスドイツの台頭や、日本における治安維持法のような法律の制定というのは、システマティックで(しかも民主的な)プロセスで選定された対象であるにも関わらず、その政策や法内容が、民主制や人々の自由を著しく制約するという帰結をもたらしました。

憲法というのは、このような法治のパラドクスに対する、制御装置としての役割を果たしています。

私たちは、私たち自身に適用されるルールを決定する権利があるが、私たちはその際に、思いもよらない危険を冒したり、その記憶を忘れたりもするので、しっかりと記録し、システム化しましょうという意思がそこにあるわけです。

このような制御機能を前提とし、当サイトの憲法改正に関する記述は昨今の憲法改正論議が、この制御機能としての要件にどう影響を及ぼすのか、についてのおおまかなまとめ用のコンテンツとなっています。

憲法96条とはどのようなものでしょうか

2012年の12月26日に、第二次安倍内閣が成立して以降、この安倍政権が目指そうとする「憲法改正」の具体的内容に、人々の注目が集まっています。

安倍内閣は、その手順として、憲法改正の手続き自体について書き記されている憲法第96条を改正し、その改正手順の簡易化を図ろうというプランを採用しています。

憲法改正を目的に掲げるのであれば(その目的が妥当か否かは別として)、その目的を達成する手段としては、極めて順当な方法であると言えるでしょう。

現行の憲法第96条においては、憲法改正を行うにあたって、衆議院と参議院の両院において、議会の3分の2以上の賛成がその発議に必要であり、なおかつその発議された総和に対して、国民投票において過半数の賛成が必要であるとされています。

これが、自民党の憲法改正草案においては、まず衆参両議院における議決要件を「 3分の2」から「過半数」に変更され、また国民投票における承認要件として「過半数の賛成を必要とする」の文言が「有効投票の過半数の賛成を必要とする」に置き換えられました。

前者の変更はあっさり理解できる部分ですね。

後者の「有効投票の」という部分の意味ですが、要するに現行憲法では、少なくとも条文上は国民投票の「どの票についての過半数なのか」が明示されていませんので、例えば憲法改正反対派は、その解釈の仕方について反駁を仕掛けることが出来るわけです。

例えばロシアの憲法改正は国民の過半数が参加し、なおかつその中で過半数の賛成が必要、となっていますので、このような例を挙げて反駁が出来る、ということです。ただ通例の解釈では、この過半数とは有効投票の過半数であるとされています。

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憲法96条を改正するメリットにはどんなものがあるのか

憲法96条を改正することのメリットについて考えましょう。そもそも憲法というのは、日本国民全体に影響が及ぶルールですので、何も自民党などの特定政党だけがそのメリット・デメリットを被るわけではありません。少なくとも原則論としては、私たちが自分自身で、その内容について吟味をしなければなりません。

そういうわけで憲法第96条が改正された場合の「私たちにとっての(自民党にとっての、ではなく)」を考えましょう。その重要なメリットは、やや抽象的な言い回しになりますが、日本に民主主義という文化や制度が、よりよく根付く契機になり得るかもしれない、という部分ではないでしょうか。

民主主義という制度は、「みんなについてのルールはみんなが決める」という原則に基づきますが、この原則が「採用」されている根拠は、「みんなが決めたことは正しい」からではありません(そのように言うことは難しさが伴います)。むしろその根拠は、政治学や政治哲学の領域では、次のように消極的に述べられるのが一般的です。

すなわち、「みんなで決めたルールの方が、特定の誰かや特定の組織が決めたルールよりも、修正の余地が高い」。「みんなで決めたルールのほうが、納得できる」という言い方をする人もいるでしょうが、「自分が考えているプランのほうが、みんなが言う意見よりも優れていると思う」というケースもあるでしょうから、やや妥当性に欠ける言い方でしょう。むしろ、特定の誰かや組織に委託してしまうと、その決定が翻りにくいのに対し、「みんなで決める」という仕組みならば、意見交換によるオセロのような意見分布の転換で、意志決定に修正可能性が出てくるわけです。

憲法第96条には、そのような民主主義の本懐を、自覚と実践を促してくれる可能性があるかも知れません。

憲法96条改正のデメリットにはどのようなものがあるのか

ここでは、自民党憲法草案における憲法96条改正のデメリットを考えましょう。まずこの96条改正についてよく言われていることは、アメリカやフランス、ドイツ、さらにロシアなどの国では、現行の日本国憲法以上に、憲法改正のための要件が厳しいという側面があるにも関わらず、幾度も憲法改正を実施している、という点です。

このことが翻って、国民はその気になりさえすれば、現行の憲法下における憲法改正要件であっても満たすことができるのであって、その要件を緩和してしまう事は、特定の利害を持った政党が有効投票数の少ない状態で、憲法改正を実現してしまうリスクが高まるのではないか、というデメリットが見えてきます。

ただしこれについては次のような反論もあり得ます。つまり、イギリスやスイスのような国では、憲法改正の要件は、はるかに低いハードルにある、と。そのような国々において、憲法改正についての深刻な問題が(今の段階で)生じているわけではないのだから、政治に対して腰が重いカルチャーを持つ日本においては、むしろ恐れることなく要件を緩和していったほうが良いのではないか、と。これも一理あります。

ただここはあくまでデメリットを強調する項ですので、これに再反駁を個別的に加えますと、まず英国に関しては、成文憲法を持たず、判例と慣習に依拠する部分も多いからこそ、実態としては政体についての枝葉末節の部分は頻繁に更新されるとしても、主要な国民意志については慎重に議論がなされている側面があります。またスイスに関しては、永世中立という確固たるスタンスを持ち、まあ小国であることから、その修正内容が他国を脅かすことになりにくいし、また国内に向けても利害対立的になりにくい(国内の同質性が高い)という面があって、日本にそのまま当てはめにくい、という点が挙げられます。

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