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憲法改正と9条の知っておきたい基礎知識~集団的自衛権と集団的安全保障、日本版NSCなど~

国会議事堂

国連憲章について

憲法改正、とりわけ憲法9条の改正について論じるにあたって、憲法外在的な対象でありながら、憲法に密接に関連しているのが、「国連憲章」です。

国連憲章というのは、アメリカ、イギリス、ソ連、中国の4カ国によってその原案が検討され、その後、1945年の6月29日に50カ国によって調印され、 1945年の10月24日から効力を発生しはじめた国連加盟国が護持すべき憲章です。

この国連憲章の第2条4項においては「全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定しています。

つまりこれは、実質的な不戦条約のことであり、日本国憲法第9条に掲げられている平和主義の理念と実は合致しているものです。日本国憲法の平和主義というと、まるで日本だけの特別な思想であると考えられがちですが、実際にはこの国連憲章において、まさに国際的に承認されている思想であると考えることもできるわけです。

実際、この国連憲章が効力を発揮する以前の一連の世界大戦は、各国がいたずらに自衛権を行使していたことにひとつの大きな原因がある、という反省が、この国連憲章には反映されています。この国連憲章以前の、国際連盟規約においては、自衛権の行使について、上記の「いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも」というような条件が設けられていなかったのです。

集団的自衛権と集団的安全保障

憲法改正及び9条改正について論じるに当たり、集団的自衛権と集団的安全保障のこの2つの異なる概念について、解説を加えておかなければなりません。集団的安全保障と、集団的自衛権は、その名前が似ていて、なおかつ描写が密接に関連しあうものではありますが、しかし、その性質は全く異なるものです。

集団的安全保障というのは、国際連合の加盟国の中において、国際条約および慣習等に違反して、他国に戦争をしかけた国が存在した場合に、その問題を、戦争当事者の国の問題として局限するのではなく、「すべての加盟国に対する挑戦」であるとみなして、戦争を開始した国に対し、「加盟国全体による集団的な措置を講じる」という理念およびそのシステムのことを指します。

そしてこの集団的安全保障における「加盟国全体による集団的な措置」は、国連憲章において「強制行動」と呼ばれ、この強制行動は、安全保障理事会の全会一致の許可が必要であるとされています。しかし、この事は、裏を返せば、安全保障理事会5カ国のうち、1カ国が拒否権を発動した場合には、この強制行動は実行に移されないことになります。

このような場合、もし集団的安全保障「以外」の地域的な集団的防衛規定が認められない場合、例えばある地域において、一国が暴走的に戦争をしかけた場合に、その地域の各国が集団的に防衛措置をとることが困難となります。このようなわけで、国連憲章第51条では、上記強制行動が採択されるまでのあいだ、個別的自衛権とともに「集団的自衛権」を行使する権利は、妨げられない、という旨が明記されるに至ったのです。

国連平和維持活動とは

憲法改正、とりわけ憲法9条の改正に絡んで問題化されるのが集団的自衛権について、それを容認するのか否かという論点ですが、この集団的自衛権に関連して、微妙な位置付けにあるのが「国連平和維持活動」です。

この国連平和維持活動は、PKO(Peace Keeping Operation)の名称でも良く知られていますが、これは集団的安全保障における、安保理によって採択されるべき「強制的措置」を実行する国連軍とは異なり、非武装もしくは軽武装の要因が、停戦合意が得られた「後」に、紛争当事者のあいだに入って、紛争の再発・拡大の防止を行うことを目的として実施される活動を指します。このはじまりは、1956年のスエズ運河を巡るエジプトと、英・仏・イスラエルとの間の対立に端を発しています。

実は、国連憲章で定めるところの集団的安全保障の理念に基づいた、国連軍の組織化は、実際のところ、いちども実現に至った事はありません。これは安全保障理事会において、強制的措置に対する全会一致に至ったことが今まで1回も無かった、ということです。これまで国連軍と呼ばれてきているものは、国連憲章第43条によって組織された国連軍ではなく、暫定的に組織されたものに過ぎません。

そのような中で、このスエズ運河を巡る紛争においては、PKOの前身となる、非戦闘部隊による、平和維持軍方式(PKF)が、スムーズな紛争解決を導いたとして、その活動が現在においても、引き継がれている、という背景があります。

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多国籍軍とは

集団的自衛権の問題に関わってくるのが、国連平和維持活動(PKO)および、多国籍軍という問題です。

この問題は憲法改正・9条改正問題において、非常に難しい問題です。それというのも、日本一国が平和主義を主張していても、事実、地球のどこかで紛争が生じ、その為に政治的・経済的につながりのある諸国が巻き込まれ、ひいてはその紛争が拡大し、日本も巻き込まれる恐れが生じる・・・というようなことが、世界では実に頻繁に生じているわけです。

このような、局地的な紛争に対して、ひとつには国連平和維持活動が、停戦調停後の、紛争再発抑止を目指して投入され続けてきたのですが、この国連平和維持活動がいつでも満足に機能して来たとはとてもいえないという状況にあります。

何しろ、国連平和維持活動は、非武装・軽武装の要因が投入されることになるわけですから、紛争の現地において、いまだ武装勢力がその蜂起を狙っている場合には、容赦なくその標的にされてしまうわけです。また国連平和維持活動は、当然ながら、紛争が激化している最中において、活動を展開することは出来ません。

そして、紛争のただ中にある状況で、組織されるのは、一般に多国籍軍と呼ばれる軍隊の形式です。この多国籍軍こそがまさに、国連憲章第51条において、その権利の行使上止められている集団的自衛権を根拠にして組織されます。例えば、1990年のイラクによるクウェート侵攻に対し、米国およびその同盟軍が多国籍軍として軍事介入を行ったのも、集団的自衛権によるものなのです。

在日米軍と憲法

在日米軍の問題と、憲法改正の問題は切っても切れない関係にあります。あまりにも日常の光景過ぎて、私たち日本人は、日本国内にアメリカ軍の基地があるということに対して、殆ど疑問を持たないようになってしまいますが、当然といえば当然のことながら、日本国内に米軍が基地を保有「出来る」ための根拠は、ルール=条文という形で、しっかり存在しています。

それが(新)日米安全保障条約の第6条であり、ここには「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と規定されています。

そして、在日米軍の地位についての詳細な規定については1960年に締結された「日米地位協定」に基づく、とされています。上記の日米安全保障条約第6条のポイントは、「日本国の安全に寄与し」だけではなく、さらりと、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」という文章が書き添えられている点です。

つまり、日本の意思とは「関係なく」、米国側が極東地域の平和と安全が脅かされていると判断すれば、米軍がその駐留基地を「拠点」として、軍事行動を行うことも可能である、という解釈が十分可能になるわけです。この点は、この新日米安保の採択当時から問題視されており、よく知られる安保闘争・学生デモは、まさにこの部分への反抗であったわけですね。

そして時代が経過した現在においても、この部分に関する懸念は、まったく変わらずに残っています。

国民保護法

憲法改正・9条改正問題に際して、決して避けては通れないのは、米軍との関係性についてなのですが、ここでは、 2001年9月11日に生じた米国の同時多発テロに端を発する、日本国内の一連の有事対策法の制定について、言及しておきましょう。

本項では、「国民保護法」についてです。この国民保護法の正式名称は、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」です。2004年に制定されています。これは2003年に成立している武力攻撃事態等対処関連3法(安全保障会議設置法の1部を改正する法律、武力攻撃事態等におけるわが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律、自衛隊法および防衛庁の職員の給与等に関する法律の1部改正)に引き続いて、制定されたものです。

この国民保護法は、 全195条とその附則からなる、それなりにボリュームのある法律です。この国民保護法というのは、武力攻撃事態が生じた場合の、国と地方団体及び指定公共機関などの責務とその役割分担について明確にすることを目的として制定されています。

さらに、住民の避難に関しての措置や、避難住民の救援、武力攻撃に起因する災害に対する措置に関しての措置の手順なども、この法律において規定されています。このような具体的な措置についての記述があるがゆえに、この国民保護法は相応のボリュームを持っているわけですね。この国民保護法は言うなれば、有事における自衛隊を含めた国家権力の発動の細則についての規定ですので、憲法9条の武力制限と密接に関係しています。

特定公共施設利用法

本項では、「特定公共施設利用法」について言及を行います。2003年の米国同時多発テロに起因する一連の有事法制の一環として、制定された法律です。有事という非常事態において、特権的に発動される国家権力についての法律ですから、これら有事法制は、憲法規定との距離が問われるものとなります。さて、特定公共施設利用法は、その正式名称を「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律」と言います。

この法律は、武力攻撃を受けた有事の際に、特定の公共施設に利用に関して、その指針を策定し、その有事に対する迅速な対処を行うために制定された法律です。

ここで言う特定公共施設については、この法律の第2条において、定義がなされており、それは「港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域、電波」となっています。港湾施設というのは、港湾法第二条に規定されている施設を指し、飛行場施設とは空港整備法第二条、道路は道路法・道路運送法の第2条、さらに電波とは電波法第2条の電波を言い、それぞれ、既存の法律に準拠した定義となっていますが、海域と空域については、条文上の定義が存在していません。

基本的にこの特定公共施設利用法においては、今挙げたような特定公共施設に関して、有事の際における、その指揮命令系統および、情報提供の経路についての規定がなされています。例えば港湾施設や飛行場施設に関しては、有事の際に、有事に対処する特定の者への優先的な利用を迅速に取り仕切るための命令系統が、取り決められています。

米軍支援法

ここでは、 2003年以降の一連の有事法制のうちのひとつである「米国支援法(米軍行動関連措置法)」について取り上げます。この米軍支援法は憲法改正問題において争点となる集団的自衛権と、かなり密接に、というか直接的に関連する法律です。米軍支援法は、その正式名称を「武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律」と言います。

本法律においては、例えばその第8条において「政府は、合衆国軍隊の行動、または行動関連措置の実施が、地方公共団体の実施する対処措置(事態対処法第2条第7号に規定する対処措置)に影響を及ぼすおそれがあるときは、関係する地方公共団体との連絡調整を行うものとする」という形で、解釈のしようによっては、米軍の行動に「合わせて」、地方公共団体の対処方針について「連絡=通告」を行うことができる、という風に読むことが出来ます。

この法律は、これに先立つ武力攻撃事態等対処関連三法を前提として、制定されている法律であり、その前提たる関連三法を検討せずに独立でその内容を吟味することは難しいのですが、実は、この米軍支援法は全17条からなる、コンパクトな法律ですので、親しみやすいと言えば、親しみやすい法律と言うことができます。有事の際の米軍と自衛隊との関係を知る手がかりとなる法律ですので、一度、閲覧をしてみるのも良いかと思います。この法律に書いてある内容というよりも、この法律が、どんな法律を前提に成立しているのか、という点を学ぶことが出来るでしょう。

安倍政権が構想する日本版NSCとは

2012年の12月に発足した。第二次安倍内閣が、その政策の1つの目玉として掲げているのが、「日本版NSC」構想です。NSCと聞くと、私たちはまず吉本興業の芸人養成学校を想定してしまいますけれども、これはNational Security Council (=国家安全保障会議)の略です。

「日本版」ということの意味は、米国NSCとの継続的交渉の場として、日本国内にそのような期間を設けるよう、米国側の要請によってその創設が提案されている、ということに背景があります。

実はこの日本版NSC構想は、自民党だけではなく、民主党もその低減を行っているものです。アメリカの国家安全保障会議は、アメリカにおける最高意思決定機関の1つであり、日本でも有名な中央情報機関であるCIAも、この国家安全保障会議の指示のもとに置かれています。その具体的役割は、まず大統領への政策的助言(大統領は、このNSCの議長のポジションにいます)であり、次いで長期的な安全保障政策の立案、そして、各省庁の調整が、その柱として掲げられています。

アメリカの安全保障と言えば、ペンタゴンでおなじみの国防総省の名前が思い浮かびますが、このペンタゴンの国防長官もまた、このNSCの参加メンバーの一人であり、さらに国務長官や、CIA長官、副大統領、総合参謀本部議長などを常任メンバーとしながら、各省庁の調整を図っていくという役割があるわけですね。

第二次安倍内閣における日本版NSCも、このような組織体制を引き継ぐものですが、その構成は、内閣総理大臣、副総理、外務大臣、防衛大臣、官房長官の四大臣会合という形をとり、迅速な意思決定に特化する体制を目指すことがうたわれています。

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