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憲法改正はアメリカ抜きには語れない

憲法改正

憲法改正の問題に関して、集団的自衛権がことさらに取り上げられるのは、なんといってもアメリカとの関係があるためです。

日本とアメリカの関係というのは、敗戦国と戦勝国との関係にある、というだけではなく、この両国間に置いて、日米安全保障条約という条約が取り結ばれているがゆえに、その強調がなされているのです。

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日米安保とは

この日米安全保障条約というのは、歴史的には、 1951年9月8日に全権委任により署名されたサンフランシスコ講和条約(日本国との平和条約)と同日付で締結された旧日米安全保障条約と、 1960年に新たに採択された新日米安全保障条約、さらには、 1996年4月に実施された日米首脳会談における共同宣言「日米安全保証共同宣言-21世紀に向けての同盟」における条約の再解釈の、大きく3つのフェーズに分けることが可能です。

その発端たる旧日米安保は、サンフランシスコ講和条約において、日本が連合国側(戦勝国側)によって、その主権が承認され、国際法上で日本と連合国との戦争状態の終結が宣言されたのと同時に取り結ばれたのですが、これは単なるスケジュール上の都合ではありません。

サンフランシスコ講和条約において日本が主権国家として承認されるということは、そのまま国連憲章第51条における「個別的又は集団的自衛の固有の権利」が承認されるということであり、まさにこのタイミングによって「集団的自衛」のひとつの具体的な形である「日米安全保障条約」が締結された、というわけです。

ここにも「集団的自衛権」が関与しているわけですね。

MSA協定とは

MSA協定という用語を知ってる方は、そこまで多くいらっしゃらないのではないでしょうか。少なくとも日米安保という用語に比較しますと、そこまでポピュラーなものではないでしょう。

MSA協定というのは、その正式名称を「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定 U.S. and Japan Mutual Defense Assitance Agreement」と言います。”MSA”の由来は、この協定が、1951年に施行された米国連邦法である相互安全保障法(Mutual Security Act)に基づいて結ばれた協定だからです。このMSA協定は、日本が憲法9条第2項の規定を持ちながらも、自衛隊というそれなりに巨大な軍事力を保有していることの、まさに発端となる協定です。

このMSA協定では「自由世界の相互安全保障ならびに個別的および集団的防衛を強化し、友好諸国の安全及び独立並びに米国の国家的利益のために友好諸国の資源を開発し、かつ友好諸国の国際連合の集団的安全保障体制への有効な参加を助ける」という目的で、「米国側から」、友好諸国にその協定への締結が要請されていたもので、この要請は1951年から行われていましたが、当時の吉田茂内閣は、これをかわし続けていましたが、結局1954年の3月に締結に至った、という流れがあります。

そしてこの協定に基づき、1954年の6月に「防衛庁設置法」と「自衛隊法」が制定されたのです。ここにおいてはじめて自衛隊が誕生したわけですね。ゆえに、憲法9条や憲法改正と自衛隊の関係を論じるにあたっては、このMSA協定についての言及が不可避なのです。

防衛庁設置法とは

1954年の、日米間のMSA協定の締結に基づき、自衛隊法と合わせて、防衛庁設置法が制定されました。この防衛庁設置法は、現在においては、皆さんもよくご存知のように「防衛省設置法」へと改称されています。

この改称は2007年に成されましたが、この改称は2006年に衆参両院で可決・成立した「防衛庁設置法改正案」に拠るものです。この法改正によって、もともと内閣府の外局として(つまりないかく府・省の下部機関として)存在していた防衛庁は、独立した省として格上げとなりました。

この法改正において、さらに注目すべき点は、かつてより自衛隊の任務として定めら得ていた「わが国を防衛すること、必要に応じて秩序の維持にあたること」という任務に加え、国連平和維持活動および、周辺事態を対処措置並びにイラク特措法(イラクにおける人道復興支援及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法)等に基づく自衛対海外派遣が、その「本任務」とされるようになりました。

このような海外派遣の本格的な是認については、、憲法9条の条文上の理念に基づく、必要最低限度の軍備に該当するのかどうかという点は当時も大きく争われましたし、現在においても議論の対象となっています。

当然、憲法改正論議においても、この「既に存在している」改正後の防衛省設置法と、憲法9条の改正案との整合性とが問われることになるでしょう。法律の世界というのは「新解釈がまた別の新解釈を呼ぶ」という、一種の法則性を兼ね備えていますので、憲法改正と防衛省設置法および自衛隊法の、解釈の相互膨張に関して、注意深く観察する必要があります。

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自衛隊法とは

憲法改正論議において、最大の焦点は、なんと言っても「自衛隊」の取り扱いです。実は自衛隊の取り扱いというのは、何も9条にのみ関連しているものではありません。むしろ、憲法全体、さらには法律全体にまで、その影響が及ぶものです。

なぜならば、社会制度の分類において、我が国は「立憲」君主制がとられており、これは君主を抱きつつも、国民が服従するルールは、君主の命令ではなく憲法にある、ということを意味するものです。

つまり「法治」が実現されているわけですが、そもそもこの「法治」なるものを実現しているものは、何なのか、という問いが可能になります。私たちは法を破り得る潜在力を持ちますが、法を破った場合の「制裁」を恐れて、少なくとも公に違法行為を行うことはしません。この「制裁」に実効的効力を及ぼしているのが、「集合化された暴力」と言いうるものです。「制裁」システムの末端、すなわち「窓口」に立っているのは、警察官です。

ところが、一人一人の警察官が保有している暴力は、わずかなものです。確かに拳銃という武器を彼らは保有していますが、もし市民が武装蜂起をした場合、警察は無力です。

実はその背後に「自衛隊」という、集合化された暴力があるわけです。このように考えれば法治=立憲=憲法と、自衛隊なる装置・システムとのつながりは憲法9条の1文においてのみ接合しているわけではない、ということがおわかり頂けると思います。自衛隊の現在の軍備は、1954年のMSA協定に由来する自衛隊法の制定に基づくものです。これは対外的な防衛力の増強を主たる根拠にしているのですが、実は、1億もの人口を抱える日本が、その統治機構において自衛隊を有することの意義は、必ずしも「対外」のみが動機なのではない、という点を踏まえる必要があるでしょう。

日米安全保障共同宣言(1996)とは

現在有効な日米安保、それ自体は、 1960年に採択されているものですが、この日米安保の解釈をめぐって、 1966年に当時の橋本龍太郎首相と、クリントン米大統領がその首脳会談後に「日米安全保障共同宣言-20世紀に向けての同盟」という共同宣言を発表しました。

この共同宣言は、「日米安保の再定義」とも言われるものです。この共同宣言のポイントは、日米安全保障に基づく同盟関係が、日米両国のみならず「アジア太平洋地域の安定」にとって欠くべからざる存在である、という点を強調したことにあります。その上でアジア太平洋地域において「約10万人の前方展開軍事要員からなる現在の兵力構成を維持すること」が確認されました。

つまり「日米合わせて10万人の兵力を今後も下回ってはならない」という点が、改めて約束されたのですね。この共同宣言は、翌年9月の「新しい日米防衛協力のための指針」(新ガイドラインと呼ばれます)の策定につながります。

この新ガイドラインにおいては、在日米軍が展開をするにあたって、その食料補給と物資・人員の輸送、船舶臨検、情報提供等の全面支援を、日本が行う旨が明示されています。さらに翌年にはこの新ガイドラインに基づいて、周辺事態法、改正自衛隊法、改正日米物品役務相互提供協定からなる新ガイドライン関連法案の成立へと、つながっていきます。特に周辺事態法に関しては、日本国内での有事発生のみならず、日本に脅威をもたらす「可能性」がある場合にも軍事行動がとれる、という内容を含んでおり、憲法改正論議において、密な関連を持つ法律であると言えます。

周辺事態法とは

ここでは、憲法改正論議、とりわけ憲法9条の集団的自衛権をめぐる解釈に関して、密接に関連する法律である周辺事態法について取り上げます。この周辺事態法は1996年の当時の橋本龍太郎首相とクリントン大統領とによる、日米安全保障条約に関する共同宣言に端を発して、 1999年に制定された法律です。その正式名称は「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」です。

法律自体は全12条からなる、きわめてコンパクトなものです。

さて、この法律における「周辺事態」という言葉の意味が、非常に重要になります。周辺事態の定義については、法律の第一条において「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」とされています。このような事態が認定された場合に、自衛隊が実施する措置について定めたのが周辺事態法というわけです。

周辺事態に際して、自衛隊が関与することが本法律で明示されているのは、「後方地域支援」「後方地域捜索救助活動」「船舶検査活動」の大きく3つとなります。

例えば後方地域支援というのは、「周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、工法地域において我が国が実施するものをいう」と第三条一項で定められています。ここでいう後方地域というのは日本の領域と公海のなかで、戦闘行為が行われていない場所を指します。

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